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すずめの戸締まり

本来であれば、おどろおどろしい物語を『猫』と『壊れかけた椅子』で現代的なファンタジーに変換。日本各地の朽ち変わりゆく風景を描きながら、ロードムービーとして神話構造に対して忠実に語られる。新海誠作品の現時点でのBEST。
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宇宙人の画家

雑然な感じ。それは混沌と言っても良い。この映画を観た時、誰もがそう思うだろう。何一つ整っているものがない。あえて言えば、それは夢の中の瓦礫、綺麗なゴミ屋敷だ。独特な魅力がある。初期衝動というか、何か、切羽詰まった感じのものが迫ってくる。
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ロスバンド

『バンド』+『ロードムービー』!予想通り、掛け算の面白さ。王道のストーリー展開の中、登場人物が魅力的に動く。ロックの生き死になんて関係ない若者たちの短い旅。
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Black Country, New Road

フジロックフェスティバルで見た。何も期待していなかった。しかし、心動かされた。それが何故かはよくわからない。ただそのことを忘れないようにするために、ここに書く。
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ラストサマーウォーズ

夏の香りを感じた。真夏の強い日差し、夕焼け、ひぐらしの声。だが海はない。場所は入間市。子供たちが主人公だが、これは大人のための映画だ。
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真昼の不思議な物体

フィルムは物質。 冒頭画面であまりにもスクラッチノイズが多かった。CGかと思った。たぶん違う。本編が始まると、ノイズは急に少なくなったからだ。 しかし、全く無くなったわけではない。35mm フィルムで上映された映像は、フィルムが物質であり、映画はそこを通過した光であったことを思い知らされる。モノクロでコントラストが強く、ハイキー気味で撮られている映像は、解像度によるざらつきを目立たせる。それは忘れ去られた自分の遠い記憶のようにも感じた。
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サタンタンゴ

物語の速度について考えてしまった。ストーリーと時間の関係において、ストーリー=話の展開が多ければ多いほど時間は必要だろうし、複雑であればあるほど、やはり時間は必要だと思っていた。サタンタンゴの物語自体は単純だ。この作品を物語として機能させる為だけであれば、7時間18分の長さは必要ない。たぶん2時間もいらないだろう。
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MEMORIA メモリア

音の記憶、それについての映画だと思っていた。当初は衝撃音それ自体を探す旅の話と。しかし、そうではなかった。タイトル通り記憶そのものについての考察だった。それも明確な事実に基づく多数の記憶ではなく、曖昧なパーソナルな記憶についてだった。
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春原さんのうた

まるで美術館の中を彷徨っているようだった。その中では個展が開かれていて、様々な種類の絵が飾ってあった。風景画・肖像画・静物画…。その飾られた絵画をひとつずつ丁寧に観て、私は何かを感じ取った。その何かは、個々の絵からぼんやりと現れる。それが何かは自分でもわからない。だが、すべて見終わった時、映画の中に明瞭な線を描いて、それは浮かび上がってきたのだった。
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明け方の若者たち

あなたは、夜を何色で塗りますか。そう聞かれているように思った。そう思っただけで、そんなセリフは映画にはない。映画全体を青の階調表現が支配している。主人公たちが夜明け前の街を走るシーンが印象的だ。その空の色は、薄く透きとおったブルーだ。