ラストサマーウォーズ

film

▪️出演 阿久津慶人 飯尾夢奏 羽鳥心彩 松浦理仁 小山春朋 上田帆乃佳 井上小百合 長妻怜央(7ORDER) デビット伊東 櫻井淳子 ▪️監督 宮岡太郎 ▪️脚本 奥山雄太(ろりえ)

公式サイトはこちら→lastsummerwars.com

夏の香りを感じた。真夏の強い日差し、夕焼け、ひぐらしの声。だが海はない。場所は入間市。子供たちが主人公だが、これは大人のための映画だ。

個人的に思っている事で申し訳ないが、『夏休みに映画を作る話』が好きだ。映画としての出来が良いとか、悪いとかはあまり関係ない。最近の邦画でいえば、「サマーフィルムにのって」や「チョコリエッタ」とか。だからあえて映画館で観た。

驚くべきことなのだが。この映画は全く気を衒おうとしない。意外な展開や、想像もできない結末はない。ショットがとか、アングルがとか、色彩がとか全く関係ない。たぶん、ほぼ予想されていたとおりに話が進み、思っていたタイミングでカメラが切り替わる。それが映画自体に没入させる効果があった。単純に只々楽しめた。

「サマーフィルムにのって」であれば、タイムトラベルといった趣向が取り込まれていたり、「チョコリエッタ」であれば、思春期の複雑な内面を映し出す映像があったりするが、「ラストサマーウォーズ」にそのようなものはない。大人と子供の対立軸の中、小さな事件は起きるが、とんでもない事態に陥ることもなく、劇中映画の完成に向けた、物語上のひとつの障壁にすぎない。この単純明快さがプログラムピクチャー全盛期の邦画を思い出し、少し懐かしんでしまう。夏休みに野外でスクリーンに映し出して大勢で見たら、楽しい映画だと思う。

物語の展開では、最初のスタッフ集めがやたらスムーズに行くところがいい。途中仲間割れもあるが、製作も比較的順調に進む。結末も苦いものではなく、さわやかな展開だ。(年齢的に)リアルな子供たちが」演じていることが、その清涼感に大きく貢献している。その日の撮影が終わり、ひぐらしの鳴く公園のシーンはまさに理想的な夏休みだ。

少し残念なことは、劇中映画の完成版がまったく登場しないことだろう、できればエンドロールの中でスチールでもよいので見たかった。映画は完成して初めて成立するものなのだから。

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