Black Country, New Road

music

フジロックフェスティバルで見た。何も期待していなかった。しかし、心動かされた。それが何故かはよくわからない。ただそのことを忘れないようにするために、ここに書く。

ホワイトステージでバンドメンバーが音合わせするのを、比較的前の方でぼんやり観ていたが、他のアーティストが放つような独特の存在感は皆無で、ステージが始まる前の緊張感も感じられない。何も期待していなかった。音合わせが終わりステージに誰もいなくなると。PAからカーペンターズの曲が数曲流れた。懐かしかった。もうカーペンターズの曲だけ聴いていれば良いのではないか、そんな思いが頭に浮かんだ。もうこの数曲があれば、他に何もいらない。その時は本当にそう思った。

カーペンターズが演奏する曲が終わりしばらくすると、ステージが始まった。男女混合の6人が少し距離を取って立ち、演奏する。ステージへの気合など全く感じられない。ごくごく普通の服装だ。演奏途中、ギターはエフェクターが気になるのだろうか、曲間で常に微調整している。ステージ慣れしていない。バンドをやっている学生がたまたま大きなフェスに出てしまったといった感じだ。

中盤に向かい、ドラムと、ベースのバランスを欠いた大きい音が嫌になり、少し後方に移った。正直もう他のステージに移動しようかと迷っていた。腰痛もあり、どこかで休みたいと思ったのもある。しかし、後半に行くにつれ、何かが気になり始めた。この結末を見届けたいと思った。これからどう展開するのだろうかと思った。

流れが変わったのは、最後の2曲だった。演奏はキーボードとバイオリンだけになり、他のパートはステージに座り込んで、水やビール?を飲んで、その二人を見ていた。かなり気を衒った感じだったが、何故かすんなり受け入れることができ、演奏に聞き入った。演奏していないメンバーも少し微笑んで演奏を見ている。そして、その曲も終わりが近づくとすべてのメンバーが最初のポジションに戻り、楽器を持つ。キーボードの女性が、流暢に『これが最後の曲です。』と言い演奏が始まる。ドラマチックな展開の中、曲が終わる寸前にボーカルをとっていたベースの女性が感極まって泣いてしまった。意外な展開に本当に驚いた。 それと同時に最後の曲はすごくよかった。

全ての演奏が終わり、抱き合うメンバー。彼らが退場するまで客席からは拍手が鳴り響く。こんな瞬間はなかなか無い。このバンドが今後どう変わっていくかは分からないが。彼らにとって大切な時間に立ち会えたような気がする。ありがとう。

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