2022-01

film

明け方の若者たち

あなたは、夜を何色で塗りますか。そう聞かれているように思った。そう思っただけで、そんなセリフは映画にはない。映画全体を青の階調表現が支配している。主人公たちが夜明け前の街を走るシーンが印象的だ。その空の色は、薄く透きとおったブルーだ。
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草の響き

走ることに意味はない。走ることは禅。「走っている時視界は洗われるようになって物がよく見え、感じることで直接外界に触れることができる(原作より引用)」。『狂わないように走っているんだ。』と主人公が言ったことが、特に印象的だ。走ることで見えること、見えなくなること、作品は説明せず、確かに提示している。その潔さが心地よい。
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ドライブ・マイ・カー

脚本が素晴らしい。村上春樹の原作を崩さずに、短編を大きく、豊かに表現している。原作を超越した作品、「別なもの」と考えるべき映画。村上春樹が好きな人は、作品以外に付け加えられた部分の大きさに驚くとともに、違和感を持たない。本来そうあったであろうと思うように。
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由宇子の天秤

152分の時間を感じさせない映画。画面の中で次に何が起こるかわからない、目を離せない映像。フィクションとドキュメンタリーの境界を無効にする力のある作品だ。この緊張はどこからくるのだろうか。物語、その展開、演技、それら全てが絡み合ってのことなのだが、それ以外に観客にも緊張を迫るものがあった。